—死神—
人間から寿命を買う死神がいた。
「十年分の寿命を売ってくれるのですか?」
「はい、お金がなくて娘の治療費が払えないんです。どうかお願いします」
男は顔の前で手を合わせて頼んだ。
死神は、男の要求通り寿命を十年分吸い取った。
「十年分の対価です」
「ありがとうございます」
男はニヤリと笑った。
そのまま走り去った。
死神はしばらく男の様子を見ることにした。
男はギャンブル中毒だった。競馬やパチンコなど、あらゆる賭け事に朝から晩までのめり込んだ。故にあっという間にお金はなくなった。
また男はやって来た。
「また十年分の寿命を売ってくれるのですか?」
「娘の状態が良くならないんです。またお願いします」
死神が寿命を吸い取ると、男は倒れて動かなくなった。
「おや、寿命が尽きてしまったようですね。お客様、申し訳ございません」
死神は漆黒の翼を羽ばたかせて、空を飛んだ。寿命を簡単に吸い取らせてくれるような次の人間を探して。
お題:手放した時間
11/24/2025, 4:49:09 AM