上京してすぐは貧乏で、その日のご飯もやっとだった。
だから田舎から持ってきたボロの手袋を、一緒に上京してきた彼女と分け合って片方ずつ使っていたものだ。
彼女は可愛い顔ではなかったけれど気立てが良くて、何よりも縁を大切にする人だった。
「やっぱり片っぽ寒いでしょう、私はいいから拓巳が使いな
よ。」
「いや、いいよ。二人で手を繋いでいればあったかいよ。」
なんて言い合って、飢えも寒さも2人で乗り越えてきた。
もう暗くなったぜ、これじゃすぐ冬になるなぁ。
そうだ、みたらし団子買ってきたよ、好きだったよな。
……これが本当は3番目なの、知ってたよ。安いもんな、
あーあ、お前が居ないと両手があったけぇや。
12/27/2023, 6:54:13 PM