【大事にしたい】
漫然とつけたテレビが、今朝起きた事件の報道を流している。
バラバラの遺体がポリ袋に詰め込まれて見つかったらしい。いわゆる猟奇的な殺人事件だ。見つかったのは胴体と四肢。四肢はさらに切断され、細かく分けられていたとのことだ。
「これ、どれくらいの労力がいるんだろうな」
私は彼女に問いかける。
だってそうだろう。人間の体を一回刻むのに、どれくらいの時間を費やすのか想像がつかなかった。
「生きながら切られたらどんなに痛いんだろうね」
私は続け様に質問を投げかける。
彼女から返答はない。
首から上だけの彼女は、昨夜不審な男と出くわした時に買い取った。危うく自分が殺されそうになったが、隠蔽工作を手伝ってやると言うと、存外素直に応じてくれた。
私は男に、遺体を切り刻み、指紋を消すことを提案した。頭はこちらが貰うから、遺体の身元が割れるまで時間を稼げるだろう、とも伝えた。
男は私に従い、まずは首を鋸でギコギコと切り始めた。刃が通らないのか、時折骨か何かに引っかかりギシと嫌な音が聞こえたが、何度も引いていると首はゴロンと胴体から切り離された。鮮血が飛沫を上げ、流血がてらてらと輝いていたのを鮮明に覚えている。
あの時彼女が生きていたかどうか、その後あの男がどのようにして遺体を処理したか、私は何も知らない。
私はその首を自宅へ持ち帰り、今日もこうして彼女に話しかけている。薄白く滑らかな肌、長く透き通るようなロングヘア、閉じたままの瞼。どれも魅力的だった。
彼女は、いずれ腐ってしまうとわかりきっているからこそ今を大事にしたいと思わせる、一種の儚さを持っていた。
9/20/2023, 11:01:55 AM