そんじゅ

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「太陽の下であれば昼。これを命題とすれば?」
「対偶は、昼でないならば太陽の下ではない」
「お、トワイライトタイム無視すんの?」
「そもそも命題にしちゃ言葉の定義が曖昧だもんよ」
「そりゃそーね。じゃ、対義語は?」
「月の上であれば夜」
「上かぁ。そこ、上に行くんだ?」
「どうせ昼でも夜でも空は真っ黒じゃん、今」
「違いない。日没まであと3日だってさ」

月が気軽な旅行先に加わったのはもう2世紀半も昔のことだ。ウサギもカニも美女もいない殺風景な月面にがっかりしたという観光客は未だに後を絶たないが、だからといって皆がロマンまで失ってしまうわけでもない。

月面の拠点都市で15日間続く夜を満喫できるナイトライフツアーは、スピリチュアルな体験を求める若者に大人気だ。陸も海も空も人工光に覆われ尽くした地球では失われて久しい、完璧な闇夜への憧憬。

宇宙進出を果たして5世紀、人類はようやく、人の精神が光だけでは満たされないことを思い出しつつあった。


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「太陽の下で」

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所感:
あまのじゃくが!あまのじゃく様が「お題の逆張りしてみろ」って言うから逆らえなかったんです!
でも地球人感覚だと月の夜って本当長いですよね!

11/26/2022, 6:09:23 AM