【君に会いたくて】
周囲から聞こえる耳馴染みのない外国語。手紙の住所を打ち込んで登録した地図アプリの表示する道順を凝視しつつ、知らない異国の道を進んでいく。と、なぜか不意に後ろから手首を掴まれた。
「そっちは危ないですよ!」
日本語、それも久しく電話越し以外に聞いていなかった君の声。強張った全身の力を抜いて背後を振り返れば、君の目が大きく見開かれた。
「は……? 何でここにいるの……?」
そんなの決まっているじゃないか。にっこりと笑って両手を広げてみせた。
「君に会いたくて!」
呆れたようにバカじゃないのと呟いた君の耳が、真っ赤に染まっているのが可愛らしくて仕方がなかった。
1/19/2024, 11:20:44 PM