そっと風が吹き抜けた。顔を上げて空を睨む。落ち葉を舞上げ去っていく風を、ただ目で追いかけた。「馬鹿」そっと呟く声は、誰にも届くことはない。祈りも希望も、風はすり抜け掻き消していく。軽く頭を振って視線を戻し、歩き出す。吹き抜ける風に、もう足は止めない。前だけを見据え、進んでいく。頬を冷たい何かが伝い落ちるのは、気のせいなんだと言い聞かせた。
11/21/2025, 4:14:54 AM