涙の理由
「もうっ!ふざけんなよ!」
声にならない泣き声をあげながら、手近なものを次々と投げては感情を爆発させていた。そこそこの年齢の大人が物を投げながら、暴れまわっているなんて見苦しいにも程があるが、こうでもしないとやっていられないのだ。
ひとしきり暴れたあと、倒れていた椅子を直しそこに座った。乱れた呼吸を無様に整えながら床を見つめていた。静かになると、いろんな考えや羞恥や罪悪感が沈黙を埋めるように、押し寄せてきて思わず頭を抱えたくなるが、やめた。もうすっかり疲れきっていたので、寝ることにした。これじゃ子供だと言われても仕方ないだろう。
もうどうにもならない事だと分かっているのに、いつも泣いてしまう。本当にもう取り返しがつかないのに。
『狂人』
10/10/2024, 3:02:13 PM