好きになれない、嫌いになれない
今日こそ返事を聞かせてほしい。
颯太(そうた)は先日、リュイに付き合ってほしいと告白したが、返事をもらえていないのだった。
リュイは長い金髪をかきあげて、物憂げな眼差しを颯太に向けた。
「好きにはなれない」
「え……」
一瞬で心が凍りつく。リュイの視線を受けて、こんなときでも、きれいだなーと見とれてしまうのは、ショックを軽減するための、一種の現実逃避なのか。瞳が明るい茶色で、ふちは青みがかっていて。肌は白を通りこして青いほどだ。……じゃなくて。
「……そうか、わかったよ」
一応は持ち合わせているプライドで、何で?どうして?ダメなところがあれば全力で直すから!と、なりふりかまわずすがりつくこともできず、ふらふらと、その場を離れようとする颯太に、
「嫌いにもなれない」
と、澄んだ声でリュイが放った。
「え……?」なんだよ、それ。
「それって、つまり友だちってこと?」
今までと変わらないのか?告白したことで、気まずくなって、友人関係も失うくらいなら、変わらないと言ってもらえることは、ありがたいことだったけれど。
「そんなこと言ってない。ハナシまとめるなよ」
「は?」まぬけな声がでた。
「好きにはなれない。嫌いにもなれない」
「その心は?」大喜利か?
「下僕としてなら認める」
「はあああ――――!?」
思いがけないリュイの言葉に颯太はのけぞった。
「嫌なのか?」
そう言ったリュイの瞳が、冗談ではなく真剣なことに気付いてしまう。そして、全く嫌だと自分が感じていないことにも。
「嫌じゃない、です」
何故か口調まで改まり、二人きりの放課後の屋上は、夕暮れの空が薔薇色に染まり、その選択が天国なのか地獄なのかどうでもいいように、太陽の金と青とが混ざってきれいだ。
4/29/2025, 4:35:18 PM