→短編・追い風、向かい風
ペットのつむじ風ふぅちゃんを誘って散歩に出た。冬の乾燥した気候が大好きなふぅちゃんはご機嫌で、くるくる舞いながら私の背中を押してくる。
「ちょっとふぅちゃん! 追い風すぎて倒れちゃうよ!」
あまりに風圧に私はつんのめった。ふぅちゃんはあっという間に私の前に周り、私を支えてくれた。
「ピュイ!」
嬉しそうな声で鳴いて、ふぅちゃんは私にまとわりつく。
よしよし、いい感じ。まだバレてないぞ!
今日は年に1回の健康診断日。何とかふぅちゃんに気取られないように動物病院まで連れて行かなくてはならない。去年はあと少しってところでバレて苦労させられた。
あまりに順調に進むものだから、拍子抜けしてるくらい。フフ、これなら早く終わりそうだ。
絶好調! よしよしよしよ……あれ?
体が……、前に! す、進まない!!!
「ふ、ふぅちゃん?」
いつの間にか、ふぅちゃんは私の前で向かい風を吹かせ始めていた。
返事もしない。
しまった、私の浮かれ具合で病院行きがバレたようだ。
「ふぅちゃん、今日は健康診断だから痛いことは何もしないよ? だから止めて、ね?」
説得は遠くに吹き飛ばされた。向かい風、キツイキツイ!
私のつむじ風ちゃんは、すっかりつむじを曲げてしまったようである。病院行きは難航しそうだ。
テーマ; 追い風
1/7/2025, 3:02:54 PM