#84 秋恋
千早ぶる 神代もきかず 竜田川
からくれなゐに 水くくるとは
「あーあ、どこかに良い人いないかなー」
「そりゃ、どっかにはいるだろうよ」
「私の目の前にいて欲しい!」
「はいはい、俺はどうせ悪い人ですよ。んで?付き合ってた奴はどうした」
「もちろん別れた」
「うん、それは冒頭のセリフで察してるから。肉付けしてほしいんだが」
「それよりお代わりちょうだい」
「あーはいはいワカリマシタ」
目の前でくぴくぴ呑んでるこいつ曰く、
俺は『飲み友No. 1だけどタイプじゃない』んだそうだ。
お前のタイプなんぞ知るか。
「はぁ〜、おいしいねぇ」
交際期間は1年保たなかったり2年以上続いたりバラバラだが、
別れるのはいつも夏の終わり、秋のはじめ。
んで、俺のところに酒を飲みに来る。
なんなんだ。人を安全牌にするんじゃねえよ。
無防備に頬を真っ赤にさせやがって。
「…竜田川」
「え、なになに?」
「何でもねえ。それより水飲め、水」
早く俺のところまで流れてこい。
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こんなの神代の時代にも聞いたことないよ〜
竜田川の水面を韓紅の絞り染めにしちゃうなんて。
みたいなことです。
竜田川は紅葉の名所らしいですね。また、竜田姫は秋の女神なんだとか。
秋と恋で、昔読んだ漫画に和歌があったのを思い出して引っ張り出し。
そこの解釈を元に創作しました。
9/22/2023, 12:30:48 AM