閉め切っていたカーテンを開放する。窓を少し開けたら暖かくなりかけの風がわたしとあなたの髪を揺らす。
久々の日光に、あなたは目を瞬かせた。手をかざして光を遮る、その手首を回るようにくっきりと跡がついている。
「ごめんね。もう好きじゃなくなっちゃった」
できる限りの笑顔であなたに告げた。
あなたの動きがぴしりと固まる。表情が抜け落ちる。いいや、わたしにはわかる。あなたは怯え、嘆き、怖がって────嬉しがっている。
ほんとう、の「ほ」を言う前にもう一度窓を閉めた。鍵をかけてカーテンも閉めて全部元通りに。
あなたの目の前にカレンダーを差し出した。ずっと放置しっぱなしのそれをめくって四月に変え、一日を指差す。今日、何の日だ。
肩を掴んで押し倒す。手錠を取り出せばあなたは顔をひきつらせてわたしを突き飛ばそうと必死に暴れた。ごめんなさいと悲痛な叫び声が部屋に響く。
なんで今嬉しいと思ったのかな。怖がるのはわかるよ。死にたくないんだよね。でもなんで嬉しがるの。
些細な嘘でもつくものじゃないな、とわたしは痛む胸を宥めながらあなたを押さえつけた。
4/1/2023, 1:45:34 PM