NoName

Open App

私は太陽の下、最終面接会場へとバイクを走らせた。

会場まで150km離れているため、移動時間は事前にダウンロードしていたオードリーのラジオを聞き、終始ニヤニヤしなが、気分を高めて移動していた。

その日は32度あり、バイクで風を受けるのだが、「サウナの熱風」のようだった。

会場は宇都宮付近で、面接開始時間が14時で時間があったため、お昼ごはんを食べることにした。宇都宮の餃子を食べたかったが、にんにく臭い口で面接をするとマイナスな印象を持たれると思い、回転寿司で食事を済ませた。

その後、事前に調べておいた公園に向かい、バイクを駐車場に停め、便所でスーツに着替えた。
平日で人が少なかったので怪訝な顔で見られることはなかったので安心した。

公園から1km程離れた会場に向かい、受付を済ませ、ロビーで待っていた。

しばらく待っていると、ポカリスエットのCMに出演していそうな爽やかで綺麗な女性が部屋まで案内してくれた。

部屋に入ると、男性が1人座っていた。

瞬時に面接官だと思い、男性の目の前に座ろうとすると、「男性のお隣りに座ってください」と案内の女性に指示された。

「面接官の隣に座る最終面接!随分ラフだな。」と思ったのだが、女性が「これから面接前の説明を始めます」と言った時の反応から、同じく選考を受ける人だと分かった。

隣の男性が面接官ではないとわかり、安心したのもつかの間、ある不安が湧いた。

私の志望職種は1枠しか空いていないため、隣の人と競合している可能性があったのだ。

2人同時に面接を行い、自己PR合戦が始まるのではないか、と不安に思った。

面接前の説明が終わり、案内の女性が退出した後、恐る恐る男性に聞いてみた。

私「こんにちは、最初入室したとき面接官だと思いました。笑」

男性「笑」

私「私はIT職志望ですけど、どの職種を志望しているのですか?」

男性「実験職ですよ」

ジャブからのストレートで質問を飛ばし、「実験職」の返答があった時には、「勝った」と思った。試合も始まっていないのに。

面接と言う名の試合は無難に終了したのだが、一つだけ不安要素が残った。

会話の流れから、「バイクは公園においてきて、そこでスーツに着替えてきました」と私がいうと、面接官3人の空気が変わった気がしたのだ。

私の心臓は ザワザワ..... した。


行きに出ていた太陽が、面接が終わり帰る時には、雲がかかり雨が降っていた。

公園にバイクを停め便所でスーツに着替えるような「社会不適合者」と言うレッテルを貼られないことを願う。

神さまー、今にも雨が降りそうな曇り顔を飛ばし、太陽の様な笑顔にして下さい。










8/6/2024, 11:47:45 AM