彼女が僕の首を絞めたのは、仕方の無いことだった。
僕は彼女を虐めていた。今となっては、何故虐めていたのか、何故やめなかったのか、それがわからない。
彼女は自分の事を責めてばかりで、僕の事を責める事は一切なかった。周りはそれを見て、心では僕に批判を送っていただろう。
彼女に首を絞められたのは、暑い夏の日だった。
学校の体育館裏で、いつも見せないクールな表情をした彼女は、僕を壁際まで追い詰めると、首を絞めた。強く、強く、強く。
とても苦しいのに心地良い気がして、僕は抵抗が出来なかった。いつも見ていた彼女とは違う、かっこいい、なんて、やっぱり本心では僕の事を責めたかったんだな、なんて、のんびり思っている僕は最低だ。やがて彼女は、僕が気絶する寸前まで首を絞めると、パッと手を離して立ち去って行った。
翌日、彼女の訃報が耳に届いた。
朝、警察が学校に来ていた。何があったのだろうと単純な疑問を浮かべていた僕は、いつもならこの時間帯には来ている彼女の席を眺めていた。教師が慌ただしく教室を行ったり来たりしていた。
ホームルームで彼女の姿が無いまま始まった話は、僕にとっては必然的だった。訃報と今後の生活について話が進んでいくにつれて、首が痛んでくる。嗚呼、きっと彼女は僕に呪いをかけたんだ、と、その時気付いた。
何年経っても、首にある絞め後は何故か消えなかった。
彼女の10周忌にクラスメイト全員でお墓参りをした。クラスメイトは僕の存在を許してはいなかった。墓参りに来るなとすら言われた。だけど、どれだけ言われてもそれは出来なかった。
夏になると首の痛みが鮮明になる。そうして彼女の事を思い出して、嗚呼、そろそろ彼女の命日だ、と考える。
忘れたくても忘れられないとは、このことなのかもしれない。そう思った、生涯かけられた呪いの話だ。
10/17/2024, 3:20:10 PM