せつか

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突然の君の訪問。
外に出られない私は君の青い羽根と小さな歌で世界が変化していくものだということを知った。
窓辺で小さく首を傾げ、可愛らしい声で歌う君の姿。
鉄格子越しに見た君の姿に、私はどれだけ癒されたか。小さなパン屑くらいでしか感謝の言葉を告げられなかった私を許して欲しい。

君の訪問は鉄格子が冷たくなって来た頃、不意に終わりを告げたね。その頃にはもう、私は薄々気付いていた。世界が変わり続けるように、君の居場所もこの小さな窓辺ではなくなり、私の居場所もまたこの狭い部屋ではなくなる日が近いのだろう。
その日は少しずつ近付いてくる。
一歩ずつ、ひたひたと。
私は外で生きてはいけないそうだ。何が悪いのか分からないけれど、私は「悪いもの」らしい。
生まれた時からそう言われて、ずっとここで生きていたけれど、最近私に食事を運んでくれていた人が言っていた言葉でそれを確信した。
「そろそろ始末しないと手に負えなくなる」と。

――私は処刑されるのだろう。
それは私にとって、居場所が変わるだけのことだ。
どうやって殺されるのか分からないけれど、苦しみがなるべく少ないならいい。
あぁ、でも。
最期に君に、会いたかったな。

◆◆◆

「時間です。出て下さい」
それは初めて聞く声だった。
「·····」
金色の髪。青い瞳。あの羽根と同じ色をした、青い外套。
「本日午後〇〇時、貴方の刑を執行します」
春の風のような甘い声。
「·····」
「あぁ、その目が〝魔性〟と呼ばれる由縁ですね。ご心配なく、私には効きませんので。さぁ立って。身なりを整えましょう」
「·····あれは」
「はい?」
――あれは君だったんだね。

狭い部屋の片隅に、色褪せた青い羽根が一枚落ちていた。


END


「突然の君の訪問。」

8/29/2024, 2:43:24 AM