百年先も愛を誓った歌があったが、実際千年も生きてみれば人の命は儚いもので、瞬きをする間もなく死ぬのだ。築き上げた記憶は砂のように崩れ去り、「昔話」として語り継がれることなく己の中の片隅に仕舞われていく。果たして自身の隣でいつもニコニコと笑っていたものは何だったか。顔も、声も、匂いも、仕草も、忘れてしまった。
瞬きをしている合間に流行が変わり、欠伸をしている合間に世代が変わる。長く生きることは退屈であると思っていたが、目まぐるしく変わる景色は見ていて楽しい。しかし同じ景色を見て、笑いあえると信じた相手は一晩経たぬうちに老いて死んだ。
儚いものだ。
しみじみと思う。愛を誓ったならば同じぐらい生きてほしいものだが、無理難題、諸行無常、人という生き物は短命で、脆くて、それでいてただでさえ短い一生を死に急ぐのだからなかなかどうして面白い。
2/3/2024, 4:31:13 PM