「夢じゃない」
それは霧の濃い日だった。
「やっば、まともに前も見えないんだけど」通学路を妹と歩きながらそう呟く。
*真っ白な視界の中、頭の中は冷静...というか何も理解が追いついていない感覚がした。
なんか今日頭がずっとフワフワだなぁ...なんでだろ。
あ、そういえば昨日寝る前に夢を見るために色々試してたな。ということは...もしかしてこれは夢か?
*頭の中を駆け巡る記憶、夢を見やすい周波数の動画や望んだ夢の見方の解説など色々漁っていた自分が見える。
つまり今俺は、明晰夢を見ている?夢を自覚しているということはそういうことだよな!?成功したんだ!
明晰夢は自分の想像で夢の内容を自由に創造できる。
やりたいこと沢山あるんだ。まずは...空は飛んでみたいよなぁ!
*空中を舞う自分、景色がスローモーションに流れていくのは夢の中だからだろうか?それにしても気持ちがいい
俺は自由だ!この世界なら何をやってもいい。今の俺には服さえも要らない。隣で脱ぎ出した俺に妹が顔を真っ赤にして叫んでいる。こいつ夢の中でもうるっせぇな。
*だんだん霧は晴れてきて辺りは花畑が広がっていた。目の前に流れている川の向こうにはこっちに向けて悲しそうな顔で叫んでいる人達がいる。
俺は昔からヒーローになりたかったんだ。助けてほしそうなやつらは全員救い出してやるぜ!他にも大怪獣とバトルに食べきれない量のステーキ、可愛い彼女ともイチャイチャしたい!どれからしよう!
そんなことを考えていると前からトラックが走ってきた。必死にクラクションを鳴らしている。
*ピー...ピー...ピー...ピー...変な音だな。
でも明晰夢で無敵の俺には関係ない。まずは試しに蹴りでこのトラックを吹き飛ばしてやるか!
*ピーーー......あぁそうか、やっと思い出した。
裸のままで全力疾走する俺。開放感もリアルで凄いな明晰夢。
*本当にバカなことをしたな。
トラックに吹き飛ばされ宙へと舞う。全身に痛みが走る
*この世界は最初から・・・「夢じゃない」
8/8/2025, 10:50:33 PM