《好きな本》
「いきなりだけど、別れない?」
急に彼氏にそう切り出された。私に落ち度はなかったと思うのだが。
「え…なんで…?」
「なんでも何も…ちょっと事情が…」
「そうやってはぐらかすわけ?じゃあ…もういいわ。別れましょう。さようなら。」
あーあ、別れちゃった。なんであんな強い言葉を使っちゃったんだろう。もう、さっさと帰ろう。いつもより早く。
そうして、家に帰り、部屋にすぐ閉じこもってしまった。
途端に襲いかかる疑問と後悔。
「なんで突然別れようなんて言ったの?理由って何?なんで、私はあんなにも突き放したの?好きだったのに。なんで?なんで…?」
うわ言のように呟きながら机に突っ伏した。
何かが腕に当たった感覚があった。ふと見ると、日記帳だった。…これは私と彼についての日記だ。なんか彼との日々を忘れたくなくて記録していたのだ。
「…これも捨てるか」
手に取りゴミ箱へと持っていこうかと思ったが…
『私』が許さなかった。いやだ。思い出は取っておきたい。
そうして捨てずに今も取ってあり…たまに見ては思い返してしまっている。私の好きな本。自分でもホントに残念だと思うが彼との思い出の日記帳が一番好きな本だ。
6/15/2024, 2:50:56 PM