月凪あゆむ

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後悔

 後悔なんて、いくつもあるが。
 あの時の後悔ほど、覚えていることはない。

 あの、【沈む夕日】めがけて海に向かって歩いた。妻のもとへ逝こうとして、娘を泣かせたあの日。

 いまだに、あの日のことは娘は許してはくれない。
 けれど、きっとそれでいい。
 許されない限りは、妻のもとへなんて逝けないのだから。
 それは、願わくばあと何十年も先のこと。

 あと数年で、娘は二十歳になる。
 男手ひとりでの日々は、想像以上に苦難があった。
 しかし、それとともに。
 あの日、娘が留めてくれて。
 「パパ」から「お父さん」になるまでの、娘の成長をこの目で見れて。
 本当に、良かった。

 「良かった」なんて過去形で言ったら、きっとまた、娘に叱られるか。

 これからも、楽しみだ。
 最近できたという彼氏にも、もしかしたら会う機会が無いとも言えないな。……いや、さすがに気が早すぎるか。
 そんなことをひとり思いつつ。朝の支度をする、今日このごろ。





過去のお題「沈む夕日」のその後を描いてみました。

5/15/2023, 9:54:16 PM