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繊細な花。

その花は、とても繊細で、不思議だった。
風邪などでは一切揺れないが、生物が触れると、たちまちガラスのように崩れてしまうのだ。

〇月‪×日、ある探検家が森の奥深くで発見したその花は、SNS上で拡散され、急激に知名度を上げていった。
同時に、数々の人を魅了していった。

その日から花には「フリケート」と名付けられ、厳重な警備体制の元管理されることになった。
その花の所有権は大富豪たちによって転々とし、誰もが自分のものにしたがった。

ニュースやバラエティなど、数々の番組に取り上げられ、フリケートが見つかっていなかった時代とは全くの別物になっていた。
少し経ってもフリケートの話題は収まることを知らなかった。所有権の問題で殺人が起き、ニュースの目玉になっていたりもした。

ある日、神山と名乗る男性が、今までとは比べ物にならないほどの大金を出し、フリケートの所有権を手にした。
その男はフリケートに近づき、花に触れた。
途端に、花は崩れていった。
一瞬の出来事だった。
いままで必死に守ってきた物が、一瞬にして無くなってしまったのだ。

すぐに速報になり、瞬く間にその事実が広がっていった。
悲しむ者、恨む者、生きる希望を無くした、という者もいた。
私もニュースで見た時、絶望してしまった。フリケートが無くなってしまった、という思いと共に、世界が崩壊してしまうとも思った。





──────次の日。
いつもの日だった。
会社員は電車に乗り、小学生は走りながら笑っている。

何の変哲もないいつもの日だった。





まるで、フリケートは初めから存在しなかったかのように。

6/25/2024, 12:58:27 PM