つぶて

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 最初の一戟を受け止めた瞬間、お前だとわかった。
金属音を散らして飛び退った人影は怯むことなく間合いをつめてくる。続けざまの剣戟。力に逆らわず巻き込むように隙を狙ってくる。小柄な体格を生かした流れるような踏み込み。何度膝を折ろうと立ち上がってきたその脚が、脳裏の記憶と重なった。
「なぜだ!」
 俺は刀を構えたまま叫ぶ。「なぜ国に逆らう!」
 影は答えない。何度弾かれようが歯を食いしばって走ってくる。すでに奴の太刀筋は見切っていた。そして、奴が負けを悟っていることも。
 俺はきつく柄を握った。
 お前は間違っている。
 里を守るため、口を糊す家族を救うために、俺たちは国を変える。そのために今、国に従わねばならない。たとえどれほど圧政を敷く国だとしても、今はただ嵐が過ぎ去るのを待つのだ。それがどうしてわからない。俺たちは、同じ父と母を持つ兄弟だというのに。
 奴の刀が空を切った。軸を失った体はもう、俺の太刀を躱すことはない。ひらりと顔を覆う布がはだける。お前の目が俺の刀を捉えている。切先がお前の体に届く様を見ている。お前と交わした誓いが断ち切られる瞬間が俺たちの目に鮮明に映る。

(書いてからお題が「君」だって気づいた💦)
 
 

6/26/2023, 12:28:49 PM