星男

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『雫』

雫、しずく。
やはり雨をイメージするのが一般的か。

だが私のイメージする『雫』は、冬の寒さで震えるような函館の漁師町でみた、今にも崩れ落ちそうな廃屋の屋根から垂れ下がる大きな氷柱の、その先端に太陽の日が差して水がポタポタと落ちる、その様子が真っ先に浮かんだ。

あの何とも言えない函館の、行き場のない群青の空と閉塞感のある空気、しかしその中に確実に息づく人々の生活。私はこの、余所では決して味わう事のない函館を愛している。

そんな函館でみた、『雫』。

冬の厳寒に芽吹く春の息吹。
そんなものを感じた瞬間だった。

またあの光景を見たくて、私は函館を旅する。

何年後かに、また出会う奇跡のために。




4/22/2024, 8:50:33 AM