ふうり

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荒く口から息を吸って吐く
腕が痛くなるほど大きく振る
感覚がなくなるほど足を目一杯前に出す
心臓がうるさいほど強く響く

月が雲に隠れたその時
ネオンが輝く都会の路地裏を
私は全力疾走していた

右を見ても左を見ても
どこにもあの存在はいない
足を止め、スキップしている心臓を休める。
息を細かく吸っては吐き、なんとか落ち着かせる。
もうすぐ雪が降るという時期なのに、今の現象のせいで汗がべたりと服に付いた。

そんな汗ばんだ体を涼ませるかのように、後ろから風が吹く。
そう、風が。涼しい風が
いや、おかしい。
さっきまで風なんて吹いていなかった
違和感を感じ、神経をその風に向ける。
その風は、普通の風ではなかった。
ピリピリと肌が痛くなるような、まるで刃物にでも刺されたかのように血の気が引く。
風に色がついているなら、それは間違いなく赤だ。
狂気の赤色 そう、狂風だ。

後ろを振り返る
その存在はそこにいた 佇んでいた
2mある人のような姿だ。でも人じゃない。
二つの手で二つの刀を手に持ち
二つの足で地を踏み締めていた
全身は黒猫のように真っ黒で、夜を切り取ったかのように人の恐怖を思い出させる。
獲物が休憩するのを待っていたかのように、それは顔と思わしき部分を動かして、ケタケタと笑う。
耳に残る、金属音のような声だ。

始まるよと言わんばかりに二つの刀を大きく振るう
その太刀風だけで、近くの窓ガラスが割れる。
あぁ、まだ終わっていない。
朝になるまでこの存在から逃げ切らなくては

お題『どこ?』×太刀風

3/19/2025, 12:28:58 PM