風景。
美術館に行って、風景画を見ていた。
彩色が当たり前の絵画ではない。黒一色で描かれた墨画である。江戸絵画、というので、これも水彩画の一種と捉えても問題ないだろう。
美術の教科書か何かで見たことのある有名な絵画を眺め見つつ、順路通りに進む。空気が変わったように感じた。水墨画のゾーンに入る。
巻物帳で、横長の台紙。
霧深い山間の夜を描いたもので、月明かりで照らされ映えている。遠景には月が。雲が。それとなく半紙の汚れが。個人蔵と書かれてあるから、それだろう。でも、風情がある。
このような様式では、まっさらな紙が最も白い。だから、霧を描いているのではなく、山際の夜の境と樹木の影に黒を差し入れている。現実から芸術として写し取る時に見た目を反転するのだ。暗闇の部分はあえて墨を入れず、景色に着目する。だから、昼の景色のように見えて、実は夜の景色なのだ、と説明書き。
白と黒の境は水をたっぷりと含ませた滲み方だった。
霧の中の少女のように、端麗な湖を描いている。黒一色なのに、閲覧者の想像力をかき立てて、色を想像させる見事さ。
4/13/2025, 9:19:01 AM