雨上がり(6/1分)
ザーザーと音を立てて、雨が降っている。
こんな雨の中なのに、彼女は傘も持たずに部屋を飛び出した。
今頃ズブ濡れだろう。
追い掛けるべきだったが、ドアを開ける手が止まる。
彼女は雨の日が嫌いだった。
濡れるのがイヤだからだ。
それなのに、土砂降りの中に傘も差さずに出ていった。
それが何を意味するのか。
ここは、俺と彼女が同棲している部屋なのに。
俺は彼女を愛していたのに、もう終わりなのだろう。
俺は愛していたのに、彼女には上手く伝わっていなかったようだ。
彼女はいつだって、好きだと、愛してると気持ちを伝えてくれたのに。
俺の好きなカレーや、唐揚げを作ってくれたり、部屋の掃除をしてくれたり……。
ああ、俺に愛想を尽かしたのか。
俺は彼女にやってもらって当たり前だと思っていた。
愛しているなら、家事をやって当然だと。
彼女も喜んでそれをしていたから、俺はそこに自分の驕りがあるとは思わなかった。
やっぱり、彼女を探すことにした。
自分の黒い長傘を差して外に出る。
ズブ濡れの彼女を公園のベンチで見付けた。
彼女に傘を差し出すと、顔を上げて泣きそうな顔をしている。
ごめん……。
頼むから、戻ってきてほしい。
俺が悪かった。
俺は絞り出すように話した。
雨が上がった。
彼女の顔に虹が掛かった。
6/3/2025, 6:37:57 AM