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『プレゼント』

何軒か先に、おっとりとしたWさんというおばあちゃんが住んでいる。
いつも顔を合わせると、にこやかに微笑んでくれるやさしげな人だ。

一人暮らしのようなので、折にふれて声をかけるようにしているのだが、今日はいつにもましてにこやかだった。

「孫がね、そろそろ帰ってくるんじゃないかと思って」

聞けば、年末なのでお孫さんの帰省を楽しみにしているらしい。
ぶっきらぼうだけど優しい子なの、と微笑んでいる。

「クリスマスに間に合えば、プレゼントを渡せるのだけどねぇ」

なにか用意したんですか?と聞くと、一旦家の中へ入って「他の人には内緒よ?」と言いながら小さな小瓶を見せてくれた。

目を凝らしてよく見ると、瓶の中に銀色の小さな小さな羽の生えた人のようなものがいっぱい詰め込まれて、モゾモゾ動いている。
え、と顔を上げた時には小瓶は仕舞われていて、「うちの庭にいっぱいいるのよ」と笑っていた。

曰く、ソレを撒くと草花が美しく育つらしい。野菜の苗なら、実ったものは栄養価が上がり、薬草なら薬効が高くなるのだとか。
ちょっと面倒だが、名前をつければ言うことを聞くようにもなるらしい。

言葉が見つからない私に、Wさんは「やっぱり若い人は喜ばないかしら」としょんぼりしてしまった。

いえ、そういうことではなく。
それは……

「小さい頃は、あの子がよく捕まえてきてくれたのよ。飼い方も教えてくれてね。やっぱり大人になったらもう要らないかしら」

どうだろう。
もしかしたら、お孫さんはもっと大物を捕まえているかもしれないな、と思った。

12/24/2024, 9:58:44 AM