あ、と思った時にはバケツを引っくり返したような大雨にずぶ濡れにされてしまっていた。
どこか雨を凌げる場所を探すも運悪く周りには屋根のある建物は無く、せめて恋人だけでも身体を冷やさない様に羽織っていたジャケットを頭に被せてやったがこの土砂降りの中ではあまり意味のない事だったかもしれない。
恋人の腕を引き、大きな木の根元で雨宿りさせてもらうことにした、枝の間から雫がぱたぱたとこぼれ落ちてくるが直撃を受けるよりかは遥かにましだ。
「こんなに濡れたの初めてかもしれない、ちょっとわくわくするね」
被せていたぼたぼたに濡れたジャケットを絞っていると恋人は何が面白いのかくすくすと笑い、空の様子をじっと見る。
そして「ねえ、見て」と木々の隙間から空を指す。
先程までどす黒い雲に覆われていた空は半分明るい光が差し込みだし、もう半分はまだ分厚い黒い雲に覆われ雨を降らしていた。
「雨の境目だね、初めて見たよ」
恋人は空の神秘に興奮気味だ。
普段見ない表情にたまにはこんな足止めも悪くないと少し思った。
雨に佇む
8/27/2024, 1:43:37 PM