ずい

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『天国と地獄』

右か左か。生きるか死ぬか。
人生は選択の連続だ。

下を見れば空中でぶらつく自分の足が見えた。
久しぶりに屋上に行ったら胸糞悪い奴らが弱いやつに胸糞悪いことしてたから手を出した。人数的にドローならいい方だろう。
そんな感じで最後にいらないことを考えてたら、ぶっ飛ばされていた。
フェンスの網を突き破って地面に、落ちなかった。

「矢野くん! 大丈夫?!」

綺麗な顔の女子が上で叫んでいるのが聞こえる。
こんな状況喜ぶ奴いんなら代わってほしい。

70キロ近くある俺の体を片手で支え、もう一方で俺を突飛ばした奴を絞めているんだろう。女子の後ろから苦しそうな声が聞こえる。
しかも俺の動向を常に監視してる変な女子だ。

「篠原さんかっこいいな」
「ちょっと男子! 早く篠助けなさいよ!」

外野の声がうるさい。
助けられても地獄、落ちても地獄。
いや落ちたら天国か?
少しだけ湧いた女子から逃げたい心が握られた腕から、体から、力を奪っていく。

「駄目だよ、矢野くん」

滑り始めた腕をさらに強く握りしめられる。
死ぬときは一緒なんだから。
そう言って笑う女子は、なんだか輝いていて、天使のように見えた。

引き上げられた俺は打ち所が悪くてその場で意識を失った。

5/27/2024, 1:59:24 PM