「藍佑(あいすけ)~?これ見てくれるかな?」
「..............」
山吹(やまぶき)は藍佑を床に正座させて、白がまばらに付いている己のTシャツを見せる。
「これ、何かわかるよね?」
「...ティッシュです......」
「そうだね、なんでこんなに付いてるか分かるよね?」
山吹はにこにこと笑顔で藍佑に聞く。藍佑は、やっちゃった...という顔で小さくなる。
「ボクいつも言ってるよね、ポケットの中は確認してねって。何回目かな?」
「...3回目です」
「違うよ、4回目」
間違えた...と藍佑は気まずさから目と顔を少し逸らす。
「藍佑、ごめんなさいは?」
「...ごめんなさい」
すると藍佑の頰がガッ、と掴まれてグッ、と山吹の方に向けられる。
「こういうのは、目を見て言うんだよ。もう1回だね」
「...ぅ...ご、ごめんなひゃい...」
そう言うと山吹は「よく出来ました」とパッと手を離す。
「じゃああそこにある洗濯物のティッシュ取って、もう1回回してね」
「はい...」
「ボクは代わりにお風呂掃除やっておくね」
そして山吹は洗面所へと消えていった。
藍佑がいつも笑顔の山吹が怖いと思ったのは、初めてだった。
お題 「すれ違う瞳」
出演 山吹 藍佑
5/5/2025, 8:31:26 AM