『誇らしさ』
最後の1音を弾き終わると、会場には静寂が訪れました。
そして、一拍置いて万雷の拍手。
素晴らしい!
なんて素晴らしいんでしょう。
あの子がどれほど努力してきたのか、私は知っています。
厳しいレッスンに、日々の生活から削られる自由時間。
練習のし過ぎで手の腱を傷めたこともあります。
本当は緊張しやすい性格で、人前に出るのが苦手なことも。
食べ物に好き嫌いがあって、でもそれでは何曲も弾く体力がつかないと、我慢して飲み込んだことも。
お友達との付き合いも制限され、学校の授業さえ後回しになることも。
相応しくない人たちからの接触は、あの子のためになりませんものね。
何時に寝て何時に起きて、何時間レッスンに費やしたのか。
登校の途中で誰と行きあい、なにを話したのか。
帰りはどこを通って帰ってきたのか。
朝昼晩と、何を食べているのか。
あの子の1日を、私は全て把握しています。
「よく、赤の他人の子供にそれだけ入れ込めるな」
テレビを見ている私の隣で夫がなにか言っていますが、気になりません。
ああ、なんて素晴らしい!
誇らしさでいっぱいです。
8/17/2024, 5:00:07 AM