『小さな命』
「ペットを飼ってみませんか?」
魔術師がそう語りかけてきました。
「ペットはいいですよ。余計な言葉を話さず、
飼い主に寄り添い、癒しを与えてくれますから」
魔術師は懐から青い色の小さな物体を取り出します。
「それは一体?」
「スライムです」
スライム?生き物なのでしょうか?
指で突くとぷるんと小さな身を揺らします。
私はお祭りで買ったスライムを思い出して、
なんだか懐かしい気持ちになりました。
「何を与えたらいいの?」
「なんでもいいですよ。この生き物は雑食ですから。
ただし、守ってほしいことが3つあります」
・水に濡らさないこと
・光魔法を当てないこと
・夜中の12時を過ぎてから食べ物を与えないこと
「守らなかったらどうなりますの?」
「よからぬ事がおこります」
よからぬ事ってなんですの??
それから私は魔術師に押し付けられるような形で
スライムを飼うことになりました。
夜更けに本を読んでいると、スライムがそろりと
近づいてきて私の指に縋り付きます。
「あら、お腹が空いているのかしら?」
時計の針を見ると11時の方角を指していました。
まだ大丈夫ですわね。
私はセバスチャンが夜食に焼いてくれた
クッキーをスライムに与えました。
するとスライムはその小さな体でクッキーを
包み込み、ゆっくりと時間をかけて
吸収していきました。
私はこの時気づいていなかったのです。
時計が壊れて動かなくなっていたことに。
翌朝、私は目を覚ますと
ある変化が起こっていました。
昨日まで1匹だったスライムが2匹に
増えていたのです。
分裂したのでしょうか?
本当に不思議な生き物ですこと!
2/24/2024, 10:09:08 PM