Yugi

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引っ越しのトラックを前に、寂しそうにする子どもがふたりいる。どちらも今日、引っ越していくらしい。2件離れた向こうでも、業者が荷物を運んでいくのが見えた。一人はそこの子だ。

自分はこの子どもたちと面識はないが、ふたりを繋ぐ手から離れたくない想いが汲み取れる。

やがて、一人の子が呼ばれた。涙を拭って手を放す。
トラックの前に行き、親の車に乗った。

残った方は、声を張り上げた。

「勝負はついてないからな!
オレのほうが美人と結婚するから!」

声が届いたのかどうかは知らないが、一行は町を去っていき、またこの一行もトラックを走らせる。

子ども同士の別れというものは、どうにも切ない気持ちにさせてくる。
これからの人生で、様々なことに対面していく。その間にあの子を忘れるほども困難や喜びに当たることもあるだろう。再会のきっかけもあるかどうか。

ただの通りすがりである自分は、今のやり取りを茶化すことしかできないので、雰囲気を壊さないように足早に去った。

8/20/2024, 11:25:50 PM