未知亜

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ㅤ昼ごはんのおにぎりとスープを手にレジに並んだ時、肉まんのショーケースに気づいた。今年は随分早い気がした。
ㅤたとえば毎日通る道で、解体工事が始まってからとか、看板が広告募集中に変わってからとか、それまでここに何があったっけと思う。カップスープの蓋に器用におにぎりを載っけて、スマホを持った手で私は眉間を揉んだ。肉まんのショーケースが置かれた場所に、昨日まであったはずの物が思い出せない。
ㅤ先週はぐれた恋も似たようなものかも知れない。心のその部分をそれまで締めていたはずの何かを、私はもう思い出せない。
ㅤ背後の咳払いで我に返る。申し訳程度の会釈を返し、こちらに向かって手を挙げる店員へと私は歩み寄った。

『秋恋』

10/10/2025, 9:48:26 AM