子供の頃は
真琴の寝室にある電気には、電球をはめるところに大きめのくぼみがある。
そのくぼみと、電球の影と電球の形が重なると、
悪そうな顔がにやっと笑ったように見える。
真琴のマンションの階段は、晴れの日には手すりと壁と手すりの結合部分から影が伸びて、
きっと睨んだような顔に見える。
真琴はそれらの見ると怖くて、なるべく視野に入れないようにする。
真琴だけの小さな友達もいる。
パーカーを着て、いつも眠そうな友達。
魔法を使える友達。
ふっと息を吹きかけるだけで絵やねんどを本物にしてしまう。
片付けられてない、ぐちゃぐちゃし
「真琴ー、誕生日プレゼント何が良い?」
「んー、かえるのぬいぐるみ!!」
チャレンジ一年生のかえるのキャラのぬいぐるみが欲しかった。
好きな動物、アニメキャラは決まって体が一色のシンプルなもの。
もぐら、忍たま乱太郎のヘムヘム、ゆるゆるパーカーを着た女の子、ティンカーベル、魔女の宅急便のキキ、絵本に出てきた小さな女の子。
そして決まって、気に入ったキャラは友達にするか、自分がなり切るか。
キャラが吐くセリフまで決めていた。
もぐ〜としか言えないもぐら、イエスしか言えない女の子。
成りきって遊ぶ時は自分の好きなシーンやスチュエーションを小道具まで準備して、何度も何度も繰り返す。
それだけ想像力豊かだったから、
寝室の電球の影がニヤリと笑った顔に見えたり、
階段の影が鋭く睨んだ顔に見えたりした。
6/23/2024, 1:41:15 PM