見返りは求めていない。与えたぶんだけ欲しいとも思わない。仲良くなったのは理由があったんだろうけれど、思い出せない。
学生時代、誕生日にピアスをあげたらとても喜んでいたのを覚えている。それはあなたらしくなかった。まだ耳に穴あいてなかったし。
ふせた睫毛や、銀色のピアスを揺らすあなたのふしばった指に、私はいつもドキドキしていた。
留学するというあの人に最後にあった日、さみしさよりも不安がまさっていた私に、彼は言った。
「君との友情は失いたくない。これからも。」
寡黙なあの人の言葉が、私の心にすとんとおさまった。彼への尊敬、憧れ、悲しみ、怒り、いつか抱いた胸の高まり。
いつしか、私の霧がかった初恋は、何にもかえがたい友情に落ち着いていた。
今は寒い国に住んでいる、あの人。
元気にやっているかな。
7/7/2023, 12:00:14 AM