永身未来

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「なんで……」
そう呟いた私の顔は酷いものだっただろう。何十件とたまるメッセージ。目の前の伏せられた液晶でどんどんとたまっていく。そして、ある時ぴたりと止んだ。私はそこで覚悟を決める。送り主は、私のカノジョ。内容は、とてもじゃないが、言えない。恐る恐る覗くロック画面。まとめられたプッシュ通知に隠れる、私とカノジョの幸せそうなツーショット。山の頂上の花畑。雲一つない快晴に優しい風が吹き、無数の花びらが舞い上がる。その中央に手を繋ぎ、身を寄せ、照れ臭そうに笑うカノジョと私。そこに来ていた、他の人に撮ってもらった写真。奇跡の一枚。私の宝物。
まとめられたプッシュ通知を押して、一つ一つバラバラにする。そこに、恐ろしい文字が並ぶ。連続で同じ言葉が並んだと思えば、自暴自棄になる文字。私は震える手でそれのうち一つを押す。パスワードを打ち、すぐに切り替わる画面。手の震えが止まらない。表示されたトーク画面。そこには短い言葉が何個も重ねられている。最初は可愛い発言だったのに、既読がつかないからかだんだんと不穏になっていき、最終的には同じ言葉を何度も重ねている。私は恐怖と好奇心の入り混じった目で文字列を追っていく。恐怖で溢れかえっていく液晶画面。私はそれを一つ一つ読み、背中に冷や汗がつたう。最後、送られてきていたメッセージに、私は腰を抜かした。
"まってていまいく"
それをちょうど読み終わった時、インターホンが鳴った。手汗が吹き出し、こめかみから頬にかけて力が入る。私は汗でびしょびしょになり、指一本動かなくなった。暫く、妙な静けさが私を包む。そろそろ帰っただろうかと、玄関を見に行こうと動こうとする。だが、ちょうどその時、玄関の方からカチャリと音がした。それから玄関の扉が開き、誰かが入ってくる。トテトテと可愛らしい音を立ててくるカノジョ。私は布団に潜り、来ないでくれと祈るばかり。だが、そんな祈りを無視して、カノジョは一直線に私のいる部屋の扉を開けた。そして私の潜っている布団をひっぺがし、その拍子に無防備に仰向けになってしまった私に馬乗りになり、叫ぼうと口を開いたところに、カノジョはキスをした。舌が私の歯茎をいやらしくなぞり、口内を犯される。なんとか抜け出そうと体を捻り、顔を動かしたが、カノジョは腕で私の頭を固定し、酸欠からか、体の動きも鈍くなり、やがて私の動きは停止した。それを確認した後、カノジョは唇を離し、ぼうっとしている私を見て微笑んだ。
「なぁんだ、いるじゃねぇか。心配して損したぜ?ダァリン。」
私は過呼吸気味に、カノジョの名前を口にする。
『ちゅ、や…、』
中也。私のカノジョの名前。
「なんで未読無視するんだ?俺結構心配してたんだぞ?」
首をコテンと傾け、眉毛をハの字に下げる。カノジョはそのゴツゴツとした手で私の唇に触れ、割れ物を扱うかのように頭を撫でてきた。
『あ"、、ご、ごめ、ぁう"』
目尻に涙がたまる。顔が熱くなるのがわかる。
「ふはっ、そんな可愛い顔すんなよ。」
そう言って、カノジョはいっそう愛を含んだ目でこちらを見た。そして嬉しそうに顔を歪め、笑っている。そして、優しく私の頭を撫でていた手が、急に髪の毛を鷲掴みにして、カノジョの方へ引き寄せられる。カノジョも私の顔に顔を近づけ、少し動けばキスができそうな距離になる。カノジョは私の目を見つめてきた。そして、低い、唸るような声で、こう言った。
「何無視してんだよ。謝罪なんて求めてねぇんだよ。どういうつもりで俺のこと無視したんだ?」
『あ"……あぅ、ご、ごめ、なさ、…ちが、ちょっと、目を、離してた……だけでっ、』
私は目を瞑りながら必死に答えた。すると、数秒後、私の髪を鷲掴みにしていた手は離れ、私はベットに倒れ込む。そしてカノジョは安心したように笑い、私の頭を撫でた。
「ははっ、そうかよ。わざとじゃなかったんだな?じゃぁ、まぁいい。次はちゃんと返事してくれよ?」
そう言って、カノジョは私の上から退き、私の横に寝転んだ。
「せっかくきたんだし、泊まってくわ。」
カノジョは可愛らしい笑顔をしていた。

9/21/2025, 12:28:05 PM