たぬたぬちゃがま

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「なあ、宿題見せて」
「い、や、で、す」
8月31日、午後5時。明日は月曜日。
なんと非道なカレンダーだろうか。
「おねがい!まーじーでーおねがい!!」
両手をあわせて縋り付くように幼馴染の彼女に頼み込む。どれもこれも今日が金曜日じゃないのが全て悪い。
「だから言ったじゃんかぁ!!なんで今の今までやってなかったの!!」
「新作ゲームが出たから」
「馬鹿!!!!もう救いようのない馬鹿!!!!」
ほっぺを引っ張られるが、これでひるんではいけない。なんとかして宿題を見せてもらわねば困る。
「時間かかるやつはやったから!数Ⅱと数Bと現代文と古典と生物と物理と英語だけだから!!日本史と世界史はできてるから!!」
「日本史と世界史しかできてないってことじゃん馬鹿ぁああああ!!!!!」
なんとかなだめて、なんとか縋って、なんとか差し入れという名のお供えをして、俺の部屋。
「来年は絶対、絶対、7月に終わらせなさいよ……」
「ガンバリマス」
彼女の泣きそうな顔を来年も見たいと思ったことは、黙っておいた。



【8月31日、午後5時】

9/1/2025, 4:42:47 AM