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落下…



子どもは、時として危険なことをする。


小学一年の春、家に二階が出来た。

窓から外を眺めて思った。

「飛べるかも」




それから試行錯誤が始まった。

美しく飛びたかった。

しかしアイテムも限られていたので、傘で飛ぶことにした。



近くの土手を飛んでみた。出来た。

少し高いブロック塀から飛んでみた。

傘は風圧を受け、心地よかった。


横風のない晴れた日がいいと思った。


決行の日は近づいていた。


そんなある日、二階で妹と追いかけっこをしていた時、

妹が部屋から出て階段を降りようとした。

私もすぐに追いかけた。


妹は慌てて踏みはずし、階段の一番上から一番下まで落ちた。

私は妹が落ちる背中を見ていた。

こういう時はいつもスローモーションなのだ。

妹は、木から滑空するムササビのように、とても美しく飛んだ。




妹は手の骨にヒビが入った。



結局私は、二階から飛ばなかった。

今でも、妹とあのときの階段の話をするときがある。

だが、私が二階から飛ぼうとしていたことは、誰も知らない。

6/18/2024, 11:19:31 PM