光合成

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『約束』

幼なじみが病気になった。
長い間苦楽を共にした親友で戦友で盟友だった。
あいつが中学の時に初恋の失恋で泣いた時も、高校で告白のお膳立てをしたのに3日で浮気され別れた時も、大学で遊んでる女に引っかかりそうになった時も、俺はずっと隣にいた。
やっと気の合う恋人と出会え、結婚の報告を受けたのも俺が1番最初だった。
もちろん付き合う前から相談は俺がのっていた。
幸せになれよなって一緒に涙も流した。

それなのに今、何故かこいつは無機質な部屋でベッドに横たわり動かない。
サッカー部で鍛えられた身体もすっかり痩せ細り見る影もない。

将来に希望が無いから、と彼女と別れたあとは以前にも増して衰弱していった。
あまりにも見てられなかった。

幼なじみが病気になって3年が経った。
もう長くないそうだ。だから最期に1つお願いを聞いて欲しい。
2人の思い出の大きな桜の木のある公園を、俺はゆっくりと車椅子を押しながら歩く。桜並木を抜けた先にある見晴台で押すのを止める。
「それで、お願いってなんだ?」

しばらくしてあいつは死んだ。
苦しい闘病の末とは思えないほど穏やかな顔をしていた。
あいつの好きだった青色の花束を持って墓参りをしている間、俺はあいつとの約束を思い出す。

「あのな、俺を殺して欲しいんだ」
「は?」
「お願いだ」
「だって、何言って…」
「理由は聞かないでくれ」
やめてくれよ、そんな笑顔で言うなよ。

桜の満開が過ぎ、ピンクの絨毯を作る頃。
あの人同じ公園に俺らはいた。
そしてあいつは懐から薬の入った小瓶を渡してきた。
何の薬かは分からないが、あいつの表情で悟る。
そして俺は、震える手で薬を飲ませた。
ありがとう
あいつの口がそう動いたことに気づいてどうしようもなく叫びたくなった。
なんでこいつが、なんで、なんで、なんで!!

後悔はしていない。
してはいけない、と思っている。
してしまったら、あいつの覚悟を無駄にしてしまうと思ったからだ。
それでも病気になったのがあいつじゃなければ、とは考えずにはいられない。


2025.03.04
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3/4/2025, 1:23:37 PM