粉末

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今日はいいお天気。世の中も白い雲もお休み。
お店のお花達もあたたかい太陽を浴びていきいきと色付いている。それに比べて私は不謹慎にも少しぼんやりしてしまっていた。
お客さんも店長さんもいない。そしてこのぽかぽか陽気。気を抜いたら居眠りしてしまいそう。立ったまま寝ちゃう。あ、だめ。これ寝ちゃう。寝ちゃう…。
そんな私をカランコロンとお店のベルが起こしてくれた。
いけないいけない。仕事中なのだから。
あわててお客さんに視線を移す。
「いらっしゃいませ。」
そこにはとても見慣れた顔がいた。今朝もいってらっしゃいと見送ってくれた顔だ。
「こんちは。」
見慣れた、けど珍しいお客さんだ。お互いの休みが合わない日は大体家でのんびりしている人なのに。
毎日会っているのにこうして会うと新鮮でわくわくする。それに愛する人の顔が見れてうれしかった。
「何かお探しですか?」
単なるひやかしかもしれないけど。あえてこう聞いてみた。
「あ、ええと。奥さんにプレゼントしたいんだけれど。何かおすすめありますか?俺、疎くて。」
「…でしたら、こちらのバラはいかがですか?きっとよろこんでくれますよ。」
「…お姉さん。値段で選んでいないよな。」
「ふふ。どうでしょう。」


今日はいい天気だ。雲ひとつない。
外にいると少し暑いくらいだ。
だが室内であるはずの店はいま外よりも暑そうだし
なによりふたりの時間に影を落とす雲になるのが嫌で
俺は配達用の車から出られなかった。
いっそこのままふたりでピクニックでも行ったらどうだと薄暗い車内でひとりごちた。


快晴

4/14/2024, 5:28:21 AM