彷徨

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パニック障害

いつの間に眠っていたんだろう。
目が覚めると、知らない天井。ここはどこだろうと瞬時にパニックになり、目で当たりを探る。

「あ、気がつきました?今、先生呼びますからね。」

甲高い女性の声。その声に、感情はこもっていない。

私は、電車でパニック症状を起こして過呼吸になり、なんとか駅のホームのベンチに座ったがそのまま意識を手放したらしい。偶然居合わせた人が救急に電話をし、搬送されたようだ。
まだ、先程の記憶が曖昧だ。

「そうですか…ありがとうございました。」

私は、大した処置もされずに病院を後にした。今頃、人騒がせな野郎だとか、大の大人が恥ずかしいだとか、言われているんだろうか。パニック障害になってから、卑屈な思考が頭を占拠する。

初めてパニックを起こしたあの日から、私の人生はがらりと変わった。勿論、悪い意味でだ。
家に出ることすら怖い。人混みの中が怖い。狭く閉鎖された空間が怖い。乗り物が怖い。
これだけで済めばまだ良かったのだ。予期不安などもあるが、脳で恐怖をまだ認識していないうちに発作が起きていることもあるのだ。
満員電車の中、電車が発車すると同時に襲い来る強烈なめまい、そこから精神へと波及し、脳がパニック症状を理解する。理解したら最後、焦ることで症状は一気に悪化する。焦らなければ良いと言うあなたは、1度経験してみてほしい。強烈な乗り物酔いと一緒にくるめまい、白く歪む視界、強烈な耳鳴り、吐き気、手足のしびれ、全身から溢れ出る冷や汗、手足を超えて腕と脚にも波及する震え。これを精神論だと片付けられると、流石に腹が立つ。これはれっきとした病気である。
この病気になってから、電車に乗れなくなり、車に乗れなくなり、あらゆる友人からの誘いを断った。
理解のある友人と、全く理解していないような友人がいた。パニック障害は、この多様性が叫ばれる令和の時代でも、まだ知らない人が多いのかもしれない。私はこの病気で多くの友人を失ったのではないだろうか。今回断った友人はもうきっと、連絡をよこさないだろう。

精神障害は、理解されにくい。それを身をもって体感した。多くの人に理解され、みんなが少しでも生きやすい世界になったら嬉しい。


08-10 やさしさなんて

8/11/2025, 9:18:41 AM