「あなたは誰ですか?会いたくない人」
柄にもなく、口籠る。
どうでもいい言葉を選べば良かったのに、それすら見透かされるような気がした。
「仲が良かったんです、ずっと。
だけど、彼女は刺激を求め続けてる。
人生において、刺激を求める人なんです。
僕は真逆だ。今あるこの生活がずっと続けばいい、そう思って生きている。
なるべく刺激も何も起きず、些細な幸せを噛み締めていたい。
彼女を嫌いになった訳じゃない。
ただ、僕は彼女といると僕でいられないんです」
こんなにも熱量をいれて話すものかと、止まらない様子の自分自身に驚いた。
彼女との交際は、今年で六年間目であった。
離れるはずがない、おそらく永遠だろうと思っていたそれは、僕の心境の変化によって崩れ始めていた。
自分に嘘をつくのは、もう限界であった。
「離れるべきですよ、あなたが今すぐに。
結局、会ったり連絡を取ったりするからいけないんだ。あなたって、人の悪いところを認められないですよね。この人は悪い人間だ、そう決めつけちゃえばらくなのに、あなたはそれができない。
その人の良いところを必ず見つけようとする。
実際、見つけちゃうから困るんです。
だからずっと侵食される、利用される。
あなたはあなた自身で壁を作らないと。
壊されますよ、あなたもあなたの人生も。」
返す言葉を持ち合わせていなかった。
僕は彼女に別れを告げなければならない、そう確信した。僕の幸せの為、僕自身の為。
いつでも自分のことより優先してきた君に、「嫌だ」ということを何より難しく感じた。
普段は「no」とはっきり言える人間だということが信じられない。やはりなにかが違うのだ、僕らしい僕ではないと実感する。
さよならをしよう。
返信のきていない君からのラインをみて少し安心し、君に会う覚悟を決めた。
2/19/2025, 9:40:53 PM