段ボールだらけの会社の倉庫。
棚の上にある段ボールを取ってほしいと、部下の女性達に頼まれ、俺は段ボールに向かって両手を伸ばしていた。
届かないのに、俺は何をしているんだろう?
いや、ここで段ボールを取ってあげて、俺の評価を上げたい。
なぜなら、部下達が俺の影口を言っていたのを何度か聞いたからだ。
「課長いつも偉そうだよね」
「態度だけじゃなく横幅も大きいくせにね」
「私と話す時なんか鼻息荒いよ?」
「え~きも~い。距離とって話そ~っと」
思い出すだけでも、心が痛くなる。
だから俺は、なんとしても段ボールを取って部下達にいい所を見せる!
「課長!頑張って!」
「もう少しです!課長!」
「ファイト~かちょ~」
部下達の声援が力になり、段ボールを両手で掴んだ。
「よし!取れた……うっ!」
段ボールが取れたと同時に、腰に痛みが走る。
部下達にバレぬよう、何食わぬ顔で段ボールを渡す。
「課長ありがとうございます!」
「やるじゃ~ん、かちょ~。ちょっと見直したよ」
「課長、すごい汗ですけど大丈夫ですか?」
「あ、ああ……大丈夫だ。悪いが先に戻っててくれないか?俺はもう少しここで探し物があるから」
「分かりました。では、お先に」
部下達は倉庫から出ていき、俺一人だけになる。
「評価を上げるのは……大変だな……」
俺は歯を食いしばりながら、痛めた腰をさすった。
6/17/2025, 11:22:09 PM