おさしみ泥棒

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 白い息を吐きながら、重い足取りで通学路を歩いていると、突然ばしりと背中を叩かれた。「ゔぇっ」と潰れたカエルみたいな声が飛び出す。

「よ! あけおめ!」

 出会い頭に人の背中をぶっ叩いておきながら、よくもまあそんな爽やかに挨拶ができるな、と思う。

「痛いんだけど」
「おまえが新年早々辛気くさい顔して歩いてるから、喝を入れてやったんだよ」

 そういう顔をしていた自覚はあるから、うまく言い返せなかった。本当なら、だれのせいで辛気くさくなってると思ってる、とでも言いたいところだが。

「それより、俺の今年の抱負を聞いてくれ」

 鼻の頭を赤くした幼馴染は言った。
 聞きたくない。心の底から興味がないし、何より、別に聞かずともなんとなく予想はつく。

「俺は今年こそ、絶対に彼女をつくる!」

 隣の男は、高らかに宣言した。俺は鼻で笑った。ほらな、やっぱり。わかりきった答えでも、いちいち胸がへんに軋むから嫌になる。

「ふーん。頑張ってね」
「興味なさすぎだろ」
「お前の恋愛事情とかクソどうでもいい」
「冷たっ! 新年早々当たり強っ!」

 やかましい。人の気も知らないで。知られたら困るのは俺だから、墓場まで持っていくつもりだけど。

「そっちは? ないの? 今年の抱負」
「あー、無病息災」
「まじめか!」

 下手くそなツッコミが腹立たしい。どうして俺は、こんな奴のことが。自分でもわからない。
 去年も今年も来年も、ずっと変わらない。抱負というより、それは願いだ。隣にいたい。たとえ、お前にとっての一番が、俺じゃなくても。我ながら馬鹿みたいだと思う。馬鹿と一緒にいるから馬鹿になるのだ。全部こいつのせいだ。
 苛立ちのままに、隣を歩く男に肩をぶつけたら、「はあ? なにすんだよ」とぶつけ返してきた。
 上着越しに触れる肩からは、体温は伝わらない。つめたい真冬の空気が、肌に痛かった。

【テーマ:今年の抱負】

1/2/2026, 11:18:30 AM