澄んだ空と涼しい風が心地よくて、新品のマフラーをして駅へ向かう。町はどこか寂しげだった。
ホームのベンチに腰掛け、小さな鏡を取り出し前髪を整える。
いつもの場所、いつもの時間。今日もあそこにいるだろうか。
聞き慣れたブレーキ音に胸が高鳴る。一歩を踏み出して電車に乗った。
あ。
いつもの席、いつもの制服のあの子。
だけど、初めて見る手袋。
初めて感じる視線。
あの子と目が合った。
「ねぇ」
「今日はあったかそうだね」
窓の外が、淡く色づく。
真新しい真っ赤なマフラーが、私を染めた。
『微熱』
11/26/2022, 12:49:27 PM