お題『今年の抱負』
「ねー、今年の抱負、何にする?」
昼休みに友達が問うてきた。
(恐らく)適当に現代文の先生が作った、冬休み明けの課題の事だろう。手前のお弁当に、ブレザーの袖が入りそうだ。とハラハラしながら見つめた。
「推しを出す。」
「い〜じゃん。」
適当に答えた言葉に彼女は笑った。おい。半笑いじゃねえか。
「思ってないだろ?」
「あはは、いや、いいなとは思う。それほんとに書くの?とは思った。」
「書かないよ」
「だよねー」
彼女のスマホの奥で、確か彼女の推しである人の前髪が優しげに揺れた。
「じゃあ、何にすんの?」
「………勉学?」
「いいね!学生っぽーい」
「オール優」
「ウケた、天才じゃん」
「出来ねー」と突っ伏せば、「出来ねーね!」と友達が笑った。今度は本気で面白かったらしく、大きくのけぞった。椅子の前足が少し浮く。というか、柔らかいな。倒れたりしないだろうな。自分の腕から顔を少しあげつつ、友人を見つめた。
「…お前何にするの?」
「あたし?んー…」
目を閉じてから、少し上を向いた。それから、にへ。と人畜無害そうな顔で笑った。
「友達大切にするー」
なんだこいつ、と思いつつも、「…………いーじゃん」と言ってしまった。それを聞いて、彼女は「へへ。ねえ、ガチャ引いて?10連。」と言いながらスマホを差し出してきた。「ん」と答えて、パネルを触る。
それから、画面がきらきらひかる。チラリと彼女の反応を見れば、にこにこしたままだ。この感じは当たってない。
色んなキャラクターが出てきたが、全く虹色も金色も出なかった。彼女は「ありゃ」とへらへら笑って、スマホを振った。
「ふふ。ありがと〜」
何もいいの出なかったのに、へんなの。と思った。
でも、十分お前は大切にしてると思うよ。
そんな恥ずかしいこと言えなかった。
だから、「私のも引いて。石溜まってるし」とスマホを差し出した。
1/2/2025, 1:52:18 PM