桐島乃蒼

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性別も年齢もバラバラの人間が一度に同じ空間に押し込められる景色は滑稽で、移動手段のはずが今すぐにでもここから逃げ出したくて仕方がない。

地下を走る電車の窓からは、真っ暗なトンネルの内側しかか見えず、その曖昧な黒色に、死んだ顔の自分がぼんやりと写っていた。

目的地まであと5駅。

電車が地上に戻り、不意に、視界が明るくなった。

ドアが開くと同時に、一気に降りていく人の洪水に抗いながら、やっとのことで列車内に戻ると、隣から聞き馴染みのある声が響く。

その声は風鈴に似ている。

「おはよう。最近、よく会うね」

そう言って、長い黒髪を耳にかける動作が、窓から射し込む光に照らされていた。

窓から見える景色はいつも変わらない。退屈な町並みが延々と続くだけだ。
それなのに、最近の景色がどうしてこう明るく見えるのが、僕にはさっぱり分からない。

2022/9/26:窓から見える景色

9/25/2022, 10:31:32 PM