一口飲みますか。と聞かれて、たじろいだ。
その一言は、ぼくがあまりにもきみを真っ直ぐにずっと見つめ続けていたから、気を使ってくれた果ての言葉なんだろう。
一度もないチャンスだなんて下品なことが頭をよぎったが、丁寧に断らさせていただいた。
きみの喉仏で受け止められたその透明な水は、どこへいくのだろう。身体機能的な意味合いでなくて、こう、比喩的な。
ぼくも無色透明でいたら、きみは受け止めてくれるか?
あせっかきなぼくは、きみがいつも飲む天然水を好きになったよ。だから、からっぽのペットボトルは、ぼくに捨てさせて。
透明な水
5/21/2023, 1:48:50 PM