離れた、はず。
逃げれた、はず。
わからない。ここがどこまで続いているのか。私は何に追われているのか。
でも、私を追っている何かには幸いなことに足音がある。正確には足音じゃない。ベビーカーを押す音。ベビーカーが動く音。かなり音は聞き取りにくいが、遠いか、遠くないかが分かる。不幸中の幸いというやつだ。今は聞こえない。
だから遠い、はず。
これはかくれんぼじゃなくて、鬼ごっこ。直感的に分かる。
思えば、鬼ごっこなんて酷い名前だ。触れられたら鬼。
この仮説が本当ならば私はきっと鬼になるだろう。
あいつは鬼だ。ベビーカーごと。ひとりでに動くなんてそうだ。ベビーカーが鬼だ。
何も分からない。
死に直面した事で思考が回転に回転を重ねてパンク寸前になる。現実逃避したいから鬼ごっこが酷い名前だとか考えてしまうし、でも現実を見なければならないからベビーカー=鬼なんてことも考えてしまう。考える。頭が疲れる。疲労。頭がベビーカーに潰される。フル回転する。疲れる。
...?あたまが、つぶれる?
「ぁ゙」
『遠い足音』
10/2/2025, 4:10:57 PM