『優しくしないで』
わたしと葵は同じ病院で3日違いで生まれた。ちなみにわたしがお姉さんである。母親同士が友達だったので双子の様にして育った。幼稚園に入ってからは昴とも仲良くなった。家も近かったので3人はいつも一緒にいた。
葵はおとなしい性格で後から付いてくるタイプだ。
昴は活発でスポーツ万能タイプである。
わたし[琴美]はお姉さんタイプで何かを決めるのはいつもわたしだ。
昴は他の男の子と遊んでいても、声を掛ければすぐに飛んでくる。オママゴトもイヤイヤながら(半強制的ではあるが)付き合ってくれる。
夏休みには、親同士が話し合い2日交代でわたしたち3人の面倒をみることになった。2日間は嵐のようだが4日間は夫婦水入らずで落ち着けたのだろう。特に葵の親は出来ちゃった婚だったので新婚生活を味わっているようだった。
当然いろいろなエピソード(
事件・事故?)が勃発したが、それはまたの機会に...。
小学校3年生の時に響が転校してきた。席が隣り同士になったわたしたちはすぐに仲良くなった。
歓迎会(単なる3時のオヤツ)を開きクラスが違う葵と昴にも紹介した。昴は男友達が加わったので大いに喜んでいた。響はどちらかと言うと内向的な性格で自分から意見を言いタイプでは無いが4人の中では1番頭が良かった。
響は、誰にでも優しく、そして何かと暴走しがちなわたしを抑えてくれるのも響であった。
中学生になると、昴はバスケットボール部、響は吹奏楽部、葵は美術部、わたしはテニス部に入り4人ではなかなか会えなくなっていた。
中3の3学期それぞれの進路が決まった後、葵と響が一緒にいるのをよく見かけるようになった。もしかしてふたりは付き合っているのかな?と思った瞬間何かが弾けた!。葵は姉妹同然だ。葵に彼氏ができるのはとっても嬉しい、でもどうして響なの?響は...響はわたしにとって...その時やっと気がついた。いつもそばにいた響が、いつも優しかった響がわたしは好きだったんだ。
卒業間近にテニス部伝統の卒業生vs在校生の試合が行われた。
琴美は試合に集中出来なかった。響の事が頭から離れないのだ。
ガキ大将とケンカになった時、助けようとして、代わりに殴られて鼻血を出した響。
高い場所ではしゃいでいて脚を滑らせて落ちた時、助けようと下敷きなった響。
テストで0点を取った時、一緒に怒られてくれた響。
お母さんの化粧品をかってに...
「危ない先輩!」
あっ!っと思ったときにはもうおそかった。後輩のサーブが顔を直撃してわたしの意識は飛んだ。
わたしは、保健室で目を覚ました。周りには葵、昴そして響がいた。
響 「琴美ちゃん大丈夫?痛く無い?。」
琴美 「痛いに決まってるでし
ょ。」
響 「代わってあげられなくてごめんね。」
琴美 「何言ってんのよ。そんなことできる訳ないでしょ。」
響 「分かってるけど、でも、でも、ごめんね。」
琴美 「わたしの事なんてほっといてよ!優しくなんかしないでよ!あんたは葵の事が好きなんでしょ!。」
葵 「えっ、コトちゃん何いってるの?」
琴美 「だって、最近はいつも一緒にいるじゃない。」
葵 「コトちゃん勘違いしてるよ。わたしは響の相談にのってただけだよ。」
琴美 「相談ってなんのよ?」
葵 「それはちょっとわたしの口からは...。」
響 「だって、だって、高校生になったらみんなバラバラになっちゃうんだよ。琴美ちゃんに2度と会えなくなるなんて、ぼく、ぼく、死んじゃうよ〜!」
葵 「ね、わかったでしょ。響が好きなのはコトちゃんなんだよ。そうだよね響?」
響 「うん。」
昴 「お前は、相変わらず人騒がせなやつだな。」
琴美 「てへっ。」
おわり
5/3/2024, 12:47:38 PM