薔薇の生垣に隠れて
密かに静かに
しかし情熱を込めて
二人の恋は
許されないから
二人は幼く
力がないから
こうしてひっそり
つかの間の逢瀬をするのだ
そばにいられない時のぶんまで
離れがたいと
二人はきっと
比翼連理なのだと信じて
ままならぬこの世を呪う
秋の昼下がり
薔薇の香りが胸に染みる
二人だけの秘密だと笑いあって
この恋は永遠なのだと信じたくて
時よ止まれと、心が叫ぶ
鐘の音が鳴った
ああ、もう時間なのだ
別れを惜しんで
抱き合って
そして
ふたりはそっと
くちづけをした
蜂蜜のように甘くて
初めて知った煙草の味のように苦く
青い草花と、秋の香りの深い
柔らかく心に突き刺さる
恋の味、だった
「二人だけの秘密」
5/3/2024, 8:06:12 PM